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なぜ専用劇場でロングランに挑むのか/事業としての挑戦

「いつか憧れた世界」が、いま、現実の街の中にある——。日本が世界に誇る『美少女戦士セーラームーン』を、専用劇場で2026年4月よりロングラン上演しています。この挑戦は、どんな想いから立ち上がったのでしょうか。
品川駅から徒歩数分、座席が選べて、海外からでも購入できる、1時間で完結するショー。その「気軽さ」の裏側には、プロデューサー・松本美千穂の一貫した設計思想があります。

本企画では、品川プリンスホテル クラブeXにて上演している「美少女戦士セーラームーン -Shining Theater Shinagawa Tokyo-」を、プロデューサー、構成・演出・脚本それぞれの視点から全3回にわたって紐解きます。
第1回となる今回は、プロデューサー・松本美千穂のインタビューをお届けします。
(インタビューは2026年6月下旬に行われました)

株式会社ネルケプランニング 常務取締役 事業本部 本部長:松本美千穂
幼少期からエンターテインメントの世界に触れ、2006年株式会社ネルケプランニングに入社。 2016年取締役に就任。主な作品として、舞台「鬼滅の刃」、舞台「パタリロ!」、「ヒプノシスマイク」-Division Rap Battle-』Rule the Stage –、劇団EXILE公演、乃木坂46出演作品などさまざまなジャンルの舞台化の企画に携わる。

原作の武内直子先生から「世界一かっこいいものを」——その一言から始まった挑戦

――構成・演出に植木豪さん、脚本に亀田真二郎さんを迎えての本作。まずは企画立ち上げ時のお話をお聞かせください。

松本:原作の武内直子先生から「世界一かっこいいものを作ってほしい」という命題をいただいていたので、まず(植木)豪さんに相談し、その中で亀田さんのお名前が挙がって。

植木:僕がずっと「亀田さんがいい!」と言い続けていました。

松本:これまで数々の脚本家・演出家が携わってきた『美少女戦士セーラームーン』だからこそ新しいものを創りたいと。そして、武内先生からの命題を実現するにはお二人しかいないと、この体制でスタートしました。

――どういったコンセプトを軸に進めたのでしょうか?

松本:日本の舞台で、ロングラン上演することってあまり多くはないんです。海外のお客さまが来日したタイミングで、前日や当日に買って観られる作品もほとんどない。だからこそ、このシアターはいつでも足を運べて、簡単にチケットが買えることをコンセプトにしたいなと。海外からでもチケットが購入できて、座席が選べて、ショーも1時間で終わる。舞台を観たことがない人にも親しみやすい作品です。オープンから3カ月経った現状、海外のお客さまが約2割、8割は国内のお客さまに支えられています。

あえて、言葉を発する。日本語で届けるショー

――前例のないインバウンド向けのロングラン公演で、意識された点を教えてください。

松本:皆さまと言葉を使わないパフォーマンスショーにするか、言語があるショーにするか、すごく悩みました。私自身も国外で観たいもの、来日した方が日本で観たいものってなんだろうと考えたとき、舞台でもショーでも、根底には人が演じるからこその熱量と“伝えたい”という情熱がある。その熱を絶対になくしたくないと思ったんです。だからあえて言語を発して日本の文化を伝えたいと、セリフに字幕をつける形に皆でチャレンジすると決めました。

――2025年に上演し大きな反響を呼んだ、『美少女戦士セーラームーン』のパフォーマンスショー“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Liveのロンドン公演・北米ツアーといった海外公演での経験も活きている?

松本:日本で生まれた作品だからこそ、「日本語」での上演を望まれる声が多いです。言語を変えなくても伝わるんだなと。その分、吟味して言葉を発するよう亀田さんともやり取りをしました。説明的なセリフは削って、お客さまの想像力に委ねたいという思いがあったんです。

――ロングラン公演は、ビジネスや運営の面で、通常の公演とどのような違いがありますか?

松本:普段の公演とは全然違います。毎月ランニングコストがかかるので、ビジネス構造としても別物です。

亀田:ある種そこが一番の挑戦ですよね。

松本:本当にその通りです。おかげさまで、開幕以降も順調に客足を伸ばし、現在は当初掲げていた動員目標をしっかりと達成できています。アピールする場も全然違って、最近は旅行業界の方々に旅行のアクティビティの一つとして作品をアピールしていて。日本文化というと相撲、歌舞伎、着物、忍者……ですが、そこに、今回のシアターが加わったことで、ホットニュースとして受け取ってもらっています。

脚本:亀田真二郎
大学在学中に演劇に出会い、その後文学座付属演劇研究所を経て、自身が主宰を務める劇団・東京パチプロデュースを旗揚げする。劇団では全ての公演の脚本、演出を担当。現在は様々な舞台の脚本家、演出家、CMナレーターとして活動。 代表作はMANKAI STAGE『A3!』(シリーズ全脚本)、『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage(シリーズ全脚本)、舞台「ダンダダン」~Occultic Stage~(脚本)、ホンダ・オデッセイCM(ナレーション)など

子どもも大人も、初めての人も。誰もが楽しめる劇場へ

――Class A seatに4〜12歳向け料金も設定されています。ご家族で本物のエンターテインメントに触れる価値を、どう見出されていますか。

松本:子どもの頃から生のものを体験することは、すごく大事だと思っています。ファミリーで来てくださることを想定して価格設定もしました。8月のキッズ観劇Dayはあっという間に完売しまして、お子さんに観劇体験をさせたい親御さんの多さも見えてきました。

植木:ちょうどいい怖さの物語と、かっこよくて憧れるセーラー戦士たち。観劇デビューにぴったりですよね。

構成・演出:植木 豪
ダンサー、振付師、演出家、俳優。PaniCrew のメンバーとしてデビュー後、舞台、ライブ、ミュージカル、2.5次元作品を中心に幅広く活躍。近年は演出家として高い評価を受け、ダンス、アクション、ラップ、映像を融合させた独自のステージ演出を確立している。 俳優として『フットルース』の主演をはじめ、『ハイスクールミュージカル』、『グリース』など数多くの舞台作品に出演。 演出家として『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stageシリーズ、『進撃の巨人 -the Musical-』など人気IP作品の演出を多数担当している。

――作品作りとして、子ども向けに意識した部分は?

松本:子どもは背伸びをしたいから、ちゃんと物語を作れば目線を合わせてくれる。子どもも大人も、初めての方も、誰もが楽しめる舞台作品に植木さん・亀田さんが創りあげてくださっています。

――専用シアターの設計の裏側についてもお聞かせください。

亀田:劇場の内装がすごいですよね。慣れ親しんだクラブeXじゃないみたい(笑)。

松本:何度も話し合わせて頂き、「足を踏み入れた瞬間から作品の世界に入ってほしい」、その一心で今回の形に辿り着きました。とくに物販エリアは、原作の武内直子先生からもエンターテインメントのひとつとして楽しめる場所にしたいというお話を伺っておりまししたので、こだわりをもって設計を相談いたしました。また、本編1時間、観劇後30分以内にお見送りやグリーティングが終わるよう、動線も何十通りも考えて、トータル1時間半の体験として設計しています。

――サポート体制という点で、キャストに伝えていることはありますか?

松本:長期の公演を重ねる中で出てくる不安や悩みには、いつでも私たちが相談窓口となって真摯に向き合っています。私からは「質の高い安定したパフォーマンスをお客さまへお届けしていこう」と、日々伝えてきました。キャストたち自身もキャラクターを熟知し、自分たちなりに考えて動いてくれた。それがお客さまをはじめ、多くの方から寄せられたSNSでの反響につながったのだと思います。

――4月のシアターオープンからここまでを振り返り、手応えはいかがですか。

松本:本当にお客さまに感謝です。SNSの効果も想像以上ですし、舞台はお客さまが入って初めて成り立つ芸術ですので、感謝してもしきれません。当初思い描いていた光景以上のものが、この品川に生まれています。

――最後に、「気になっているけれど一歩踏み出せない」という方へ、メッセージをお願いします。

松本:『美少女戦士セーラームーン』が好きな人はもちろん、エンターテインメントが好きな人も来られる場所にしたい。東京に来たら、日本に来たらこれを観る、そんな作品になっています。どの回を観てもフレッシュな熱量を浴びられるショーです。何度でも楽しめるので、まずは一度体験していただけたらと思います。

(取材・文:双海しお、撮影:大塚浩史)


美少女戦士セーラームーン -Shining Theater Shinagawa Tokyo-

美少女戦士セーラームーン -Shining Theater Shinagawa Tokyo-

© Naoko Takeuchi  © 武内直子・PNP/「美少女戦士セーラームーン -Shining Theater Shinagawa Tokyo-」project 

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